出張旅費規程で節税ができる?旅費規程のメリットと作成時のポイントとは

出張時の交通費や宿泊費とは別に、雑費を補填する目的で支給される日当(出張手当)ですが、出張旅費規程を作成しその中の規定として定めることで、節税が可能とされています。しかし出張旅費規程を制定する際には、いくつか注意するポイントがあります。
そこで今回は出張旅費規程作成によるメリットと、作成の注意点やポイントについて解説します。
目次
出張旅費規程とは?
出張旅費規程とは、出張に関わる交通費や宿泊費などの旅費や、接待交際費、日当(出張手当)といった諸経費についての取り扱いが定められた規程です。出張規程や旅費規程などとも呼ばれています。
法人だけが作成でき、どこまでを出張費として認めるのか内容や金額に法律上の明確な記載がなく「日当3,000円」、「勤務先から100km以上の遠隔地に行く場合に適用する」など各会社がそれぞれに妥当だと思う金額や内容を決めることができます。
旅費規程作成後は労基署へ届出が必要
出張旅費規程を制定するかは会社の自由ですが、出張旅費規程は原則すべての社員を対象としますので、規定をつくる場合は労働基準法第89条第10号により就業規則の一部として扱われ、作成後は労働基準監督署へ届出が必要です。
また、出張旅費規程を作成・変更したときは、就業規則を作成・変更するときと同じく、従業員の過半数代表者の意見を聴いて、労働基準監督署に届け出をし、従業員に周知を行うといった労働基準法で定められた手続きが必要になります。
出張旅費規程を作成するメリット
作成の手続きが少し面倒だと感じるでしょうが、出張旅費規程を作成すると会社も社員も得られるメリットがあります。
出張旅費規程を作成することで得られるメリットは大きく分けて以下の点があげられます。
- 日当が経費として計上され節税に
- 経費精算の手間を削減
- 出張手配がしやすくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
日当が経費として計上され節税に
日当(出張手当)は、出張する役員や社員の慰労や、出張時にかかるこまごまとした諸経費の支払いに充てるために会社が社員に支払う費用です。
出張旅費規程を作成し日当について規定することにより、通常の給与ではなく経費として損金算入され非課税となるため、会社側は消費税、法人税、住民税の節税が可能です。
日当を受け取る社員側も給与ではなくあくまで経費として受け取るため、所得税や住民税は非課税です。日当は渡し切りのため、たとえ出張中に使わなかった場合でも、非課税の収入として受け取れます。
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経費精算の手間を削減
出張のたびに発生する旅費精算では、実費精算となると交通費や宿泊費などの領収書を一つ一つ確認し、申請内容と照らし合わせるなど、経費を申請する側も確認する経理側も多くの手間がかかります。
出張旅費規程に定額支給で補填する旨を定めれば、経費精算にかかる多くの手間をカットできます。
出張手配がしやすくなる
出張旅費規程には交通費や宿泊費の上限額についてなど、さまざまな項目があります。
出張者はそれぞれの規定に基づいて出張手配を行えばいいので、金額や列車の指定席の利用可否などで迷わず適切に手配が出来るようになります。
例えば出張先によっては、新幹線、航空機それぞれ利用できる地域もあるでしょう。
出張旅費規程に航空機の利用は、出張先まで500キロメートル以上の場合に限るなどと規定しておけば、交通手段の選択に迷うことなく手配にかかる時間も短縮されるでしょう。
出張旅費規程を作成するデメリット
基本的にはメリットの多い旅費規程の作成ですが、デメリットや懸念点もあります。
日当を支給する分の支出が増える可能性
出張旅費規程を作成していなければ、役員だけなど限定的に出張手当を支給することができますが、出張旅費規程を制定すると全従業員が対象となるため、結果として旅費規程の整備前と比較して、全体の支出が増大する可能性があります。
また、出張手当の支給額が妥当な金額でない場合は、無駄な出費となりかねない点も注意が必要です。
出張旅費規程を作成する6つのポイント
上記のとおりメリットの多い出張旅費規程ですが、作成にあたってはいくつかポイントがあります。
ここからは、出張旅費規程を作成する上で重要なポイントを紹介していきます。
①目的を規定する
まずは出張旅費規程の目的を定めます。
例)この規程は、就業規則第○条に基づき、役員および社員が社命により出張または転勤赴任する際の旅費や手続きについて定める。
②適用範囲を規定する
出張旅費規程の適用範囲を定めます。原則対象者は役員を含めた全社員ですが、パートや契約社員などが出張する必要がある場合は、別途明記しておきます。
また、出張だけでなく転勤時にかかる引っ越し費用なども規定できます。
例)この規程は、就業規則第○条に定める社員について適用する。ただし社員以外の者であっても役員の承認を得ている場合は本規程を準用することができる。
③出張の定義を規定する
どのような場合に旅費支給の対象とするのか具体的に定める必要があります。そのため出張の定義を具体的に規定します。
一般的には宿泊を伴う出張や、勤務地から出張先までの距離が片道100km以上の場合を「出張」として定義する企業が多いようです。
例)出張とは、就業規則第○条第○項に基づき、通常勤務地を起点として目的地までの距離が片道100km以上の場所に移動し、職務を遂行するものをいう。
④出張中の勤務時間を規定する
出張時はタイムカードなどがなく勤務時間の算定がむずかしいことから、あらかじめ勤務時間の取扱いを定めておきます。所定労働時間を勤務したものとみなすことが一般的です。
例)出張中の勤務時間は、就業規則第○条の定めにより、所定労働時間勤務したものとみなす。
⑤旅費の項目と支給額を規定する
旅費として支給する項目の規定も必要です。どのような旅費が支給されるのかを具体的に規定します。
大きく分けて、交通費、宿泊費、日当の3つとなり、項目ごとにそれぞれ支給額や利用出来る条件、実費精算か定額支給かなどを定めます。
交通費
交通費については実費精算・定額支給どちらも利用できますが、一般的には項目ごとに上限額を決めた上で実費精算とする会社が多いでしょう。
また役職に応じてグリーン車やビジネスクラス使用の可否を区分している会社が一般的です。
鉄道、船舶、航空機の3つが主に利用される交通機関ですが、場所によっては公共交通機関が軟弱な地域もあることから、タクシーなども「所属長の承認を受けた場合に乗車できる」などと柔軟に定めるとよいでしょう。
例)利用する交通機関は、鉄道、船舶、航空機、バスとし、タクシーはやむを得ない場合に限り、且つ所属長の許可を受けた場合に限って利用するものとする。
宿泊費
宿泊費についても実費精算・定額支給どちらも利用できますが、定額支給とする会社の割合が53%ほどだったものの、徐々にその割合が逆転し近年は実費精算とする会社が56%ほどとなっています。
宿泊費も役職ごとに上限額を定めるとよいでしょう。
例)1泊当たりの宿泊費は「一般社員 8,000円」「管理職 10,000円」「役員 12,000円」を上限とする。
日当
日当については定額支給が一般的です。しかし支給する金額については明確な基準がなく「社会通念上の常識範囲」の中で会社側が自由に設定できます。
役職に応じて支給額を変えることもできます。
例)日当は1日につき次に定める金額とし、出発の日から帰着の日までの日数によって計算する。「一般社員2,000円」「管理職2,500円」「役員3,000円」
⑥出張の手続きを規定する
出張申請や精算手続きの方法や期限など、必要となる手続きを明確に規定します。
出張申請
例)出張を命ぜられた者は「出張申請書」に必要事項を記入し、記名捺印の上、所属長に提出し承認を受けなければならない。
予定の変更
例)出張途中において、予定していた経路および日程を変更する必要が生じた場合は直ちに所属長に連絡し、その承認を受けなければならない。
旅費の仮払い手続き
例)出張旅費は、「出張申請書」に基づいて概算額を仮払いすることができる。
出張報告および旅費の精算手続き
例)出張業務が終了した場合、帰社後すみやかに次の書類を提出し、旅費の精算を行わなくてはならない。「旅費精算書」「旅費明細書」「出張報告書」「その他必要な報告書」
出張旅費規程を定める際の注意点は?
出張旅費規程を定める際は、いくつか気をつける注意点があります。
全社員を対象にする
出張旅費規程は役員を含めた全社員を対象としなければなりません。
しかし役職によって支給額やグリーン車・ビジネスクラスなどの利用区分に差をつけるといったことは可能です。
役職によって差をつける場合は、出張旅費規程にしっかりと記載しておきましょう。
想定外の事態にも対応できるようにする
出張中は急な病気や事故に巻き込まれる可能性があるため、あらかじめ対応を定めておくと、緊急時も落ち着いて対応できます。
災害などでやむを得ず滞在を延長した際の日当や宿泊費の取扱いについてあらかじめ規定しておきます。
また、海外出張では、テロ発生地域への渡航や治安の不安がある地域へ渡航する場合はリスクも大きいでしょう。
そのため旅行傷害保険などに加入することもあらかじめ規定すると良いでしょう。
妥当な支給金額に設定する
出張旅費の支給額は、交通費や宿泊費、日当などに関して、社会通念上からみて妥当な金額に設定する必要があります。
ここでいう「社会通念上からみて妥当」とは、「同業種や同規模の会社が一般的に支給している額と同様である」ということです。
あまりにも高額な支給額を設定すると、税務調査で会社の経費として認められない可能性があります。
なぜなら、家族経営の会社や、社長一人の会社で高額な支給額を設定する事で、法人税や所得税などの課税逃れを許してしまうからです。
適正額より支給が多いと指摘された場合、超過分が損金算入されなくなり課税所得として扱われたり、さらにそれ以上の支払いが必要となる場合もあるため十分注意が必要です。
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出張報告書や出張旅費精算書の作成を徹底する
出張旅費規程に基づいて支払う日当は、領収書は不要ですが、日当を支給する根拠として出張報告書の提出が欠かせません。
なぜ出張が必要だったのか、出張で何をしたのか現地での業務を記録する必要があります。
また、旅費精算がある場合は、出張旅費精算書も同時に提出してもらいましょう。
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出張旅費規程の承認を受ける
出張旅費規程を作成しただけでは規程の効果はありません。取締役会や株主総会などの正式な意思決定機関において決議し承認を得ましょう。
また、出張旅費規程は就業規則の一部として位置づけられていますので、出張旅費規程を作成、変更したときは、従業員の過半数を代表する者(過半数代表)の意見を聴いて、労働基準監督署に届け出をし、全従業員に周知を行う必要があります。
定額支給・実費精算どちらもデメリットがある
出張旅費のなかで日当や宿泊費などは定額支給や実費精算を選べると述べましたが、どちらの支給方を法選んでもメリットはあるもののデメリットも発生します。
出張旅費を定額支給することによって、交通機関や宿泊先をひとつひとつ調べて処理をする経費精算の手間を大幅にカットできる半面、安いホテルに宿泊して差額を出張者のポケットマネーにしてしまうなど、実際の費用より多く払いすぎてしまうことがあるでしょう。
また、出張の少ない社員との不公平感やコンプライアンスの面でも問題があると言えます。
いっぽうで出張旅費を実費精算で支給する場合は、旅費精算に手間がかかり過ぎることが問題でしょう。
出張手配サービスの導入で旅費規程の正しい運用を
出張旅費規程を正しく運用するには、従業員への周知とルールの遵守が重要です。
けれど、出張旅費規程に定められた内容が複雑になればなるほど、従業員の理解を深めることは難しいでしょう。
また、上述したとおり実費精算や定額支給など経費精算の面でも問題があります。
そこで、これらの問題を解決できるサービスの導入が求められています。なかでも、エルクトラベルの出張管理システム「出張手配プラス」を導入すると、旅費精算の手間の削減と出張旅費規程の尊守が非常に楽になるのです。
一括請求で旅費精算業務を削減
出張手配プラスで出張手配を行うと、社員それぞれの出張費が一括で会社に請求されます。
出張者や経理担当者の大きな負担となっていた仮払いや立替精算自体がなくなりますので、多方面において業務負担が軽減されます。
また、社員と会社の間で出張費のやり取りがなくなりますので、不正を働くことが難しくなるでしょう。
精算業務削減によって、仕事の効率化と旅費規程違反の削減が可能になるなど、たくさんのメリットが期待できます。
社員の行動管理がしやすい
出張手配プラスで出張の申込をすると、管理者はすべての社員の出張内容を簡単に把握できます。
だれが・いつ・どこに・どのような出張をしているのか可視化する事によって、万が一災害などが起こった際も安否確認が簡単になるでしょう。
また、社員に管理されているという認識が高まることで、旅費規程違反の防止や、内部統制の強化にもつながるのです。
宿泊費の定額支給・実費精算どちらも対応可能
宿泊費の精算は、エルクトラベルからの一括請求か現地払いを選択できます。
そのため、実費精算・定額支給どちらの規定にも対応しています。
また、現地払いの場合でも、管理者は宿泊プランが確認できるため、出張旅費規程を改定する際の参考データとしても活用できるでしょう。
出張申請書は電子化に対応
エルクトラベルが無料で提供している出張管理システム「出張手配プラス」では、出張申請書の電子化に対応しています。
手間のかかる出張申請・承認フローをスマホからも簡単に行えるようになるため、事務作業の時間を短縮できるでしょう。
また、出張申請をすると承認者へ通知されるので、なかなか承認されないといったことも防げます。
出張旅費規程を作成して節税しよう
出張旅費規程を作成することによって、旅費や諸経費を非課税にすることができ、節税対策や業務効率化につながります。
出張旅費規程を作成する手間はかかりますが、会社にも社員にもメリットは大きいものとなるため、本記事のポイントを参考に作成してみてはいかがでしょうか。
また、出張旅費規程を作成するだけでなく、しっかり運用していくために出張管理システムを利用して出張管理の徹底をおすすめします。
なかでもエルクトラベルの出張手配プラスであれば、出張内容を可視化でき、旅費規程違反を防止できるでしょう。
精算業務もカットでき、無料で利用できるので、出張旅費規程の作成に合わせ、出張手配プラスの導入も検討してみてはがいかがでしょうか。
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この記事を書いた人

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これまで1,600社以上の出張関連業務の効率化を支援してきた実績を活かし、出張者はもとより出張に関わる経理や総務などのバックオフィス部門にも役立つビジネス情報を発信しています。メディア運営会社:https://www.tehaiplus.com/company/outline/