経費で落とすことが可能な範囲とメリット・デメリットをわかりやすく解説

経費とは何か?と聞かれたときに何となくは分かるけど、どこから経費計上できるのか曖昧な方も多いのではないでしょうか。
例えば出張時に利用した交通・宿泊の費用や、コピー用紙などの消耗品などは経費になりすが、経費として計上するには一定の規定があります。既定の範囲を超えた場合には、脱税と見なされペナルティを受ける場合も。
この記事では経費に含まれるもの・含まれないものや、経費を計上するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
経費とは?
経費とは事業を行う上で必要な費用で、収益を得るためにかける費用のことをいいます。例えば、出張の際に利用した交通や宿泊などの「出張費」は経費として扱われます。その他にも、消耗品の購入や販売した製品の仕入れにかかった費用など、経費の種類は多種多様です。
「経費で落とす」とは?
「経費で落とす」とは、支出した費用を事業の経費として計上することを意味する言葉で、例えば出張時に飲食店で顧客を接待した際の飲食代金を事業用の費用として経費計上することを指します。
事業の税金は収益から経費を差し引いた「事業所得」をもとに計算されます。経費をたくさん計上すると、事業所得が減り税額も減少するため「経費で落とす」ことは節税につながるのです
経費を計上するメリット・デメリットは?
ここからは経費を計上するメリット・デメリットについて説明していきます。
経費を計上するメリット①:節税につながる
経費で落とすことのメリットは、経費計上することによって支払う税金を抑え節税につながる点が一番のメリットです。
事業にかかる費用は、種類も多種多様なので、メリットを最大限得るためにも経費として落とせる費用に計上漏れがないよう着実に処理する必要があります。
経費を計上するデメリット①:税法上の手続きに手間がかかる
かかった費用を経費として計上するためには、請求書や領収書、振込証明書などの書類を整理・保管し、経費申請書の作成・提出といった事務作業が必要になります。申請する量が増えると、申請する社員や経理部門の事務負担が増大するデメリットがあります。
経費を計上するデメリット②:利益が減少する
経費で落とすことによって節税につながることは良いことのように思えますが、出費が増えていることに変わりありません。節税につながるといっても余計な経費が増えすぎることによって赤字に陥ってしまう可能性もあります。
また、経費としてふさわしくない費用まで計上してしまうと、税務調査の際に脱税を疑われてしまう可能性がありますので十分注意が必要です。
経費として計上できる費用

必要経費として認められるものとはいったいどのようなものでしょうか。
国税庁は、事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額について以下のように述べています。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
ここからはどのような費用が経費算入できるか主な勘定項目を紹介していきます。
旅費交通費
旅費交通費とは、業務で利用した交通費や宿泊費などのことです。取引先へ出向く際のバスやタクシー、出張時の新幹線や飛行機、ホテル代などに加え、出張手当や駐車場などの費用も含まれます。
接待交際費
接待交際費は、取引先との会食やお中元・お歳暮などの贈答品にかかる費用のことです。取引先の冠婚葬祭にかかる費用も含めることができます。
しかし、接待交際費は線引きが難しい費用のひとつです。取引先との会食目的が打ち合わせの場合は「会議費」に該当する場合もあり、計上する際には経理担当者に確認をとったほうがよいでしょう。
また、接待交際費は公私混同しやすい費用として税務署からも厳しくチェックされる項目でもあります。計上する前には、必ずこの費用が自社の利益に結び付くのかよく考えて判断しましょう。
人件費
人件費とは、人を雇用することで発生する費用全般のことです。給与や賞与、退職金・各種手当などのほかに、社会保険料などの企業負担分である法定福利費や福利厚生費なども含まれます。
福利厚生費
福利厚生費には、法律上必要となる保険料などにかかる費用の法定福利費と、それ以外に企業が独自に行う福利厚生費用の法定外福利費に分かれます。
法定福利費には、健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険・介護保険などの保険料の企業負担分が該当します。
いっぽう法定外福利費には、通勤手当や社宅提供などや、健康診断や社員旅行などが該当しますが、企業によってさまざまです。
租税公課
租税公課には固定資産税や印紙税、自動車税や不動産取得税などが該当します。
ただし、延滞税や加算税などの懲罰的な意味合いをもつものや、所得から支払われる法人税や住民税は経費としての計上が認められません。
消耗品費
消耗品費とは、文房具や電球・コピー用紙など安価な事務用品から、スマートフォンやパソコンなどの比較的高価なものでも取得価額が10万円未満のものであれば消耗品費として計上できます。
通信費
通信費は、電話料金やインターネット料金に加え、切手代などの郵送費も含まれます。
広告宣伝費
会社やサービスの広告を出したりする際にかかった費用は広告宣伝費として経費計上します。例えば、チラシや新聞広告・WEB広告などの制作費や印刷代、試供品にかかる費用などがあります。
新聞図書費
事業で必要となる場合は、新聞・書籍・雑誌なども新聞図書費として経費計上できます。紙媒体だけでなく有料のメールマガジンや情報サイトの会員料金なども対象です。
研究開発費
研究開発費には、仕事に活かせる知識や新たな刺激を得るために参加するイベントやセミナーなどの受講費用を計上できます。
修繕費
事業用の自動車や建物、機械などの修理や維持管理にかかる費用は修繕費として経費計上できます。
ただし、原状回復や現状維持のためにかかる費用に限られ、性能向上や価値を上げるために行った修繕の費用は含まれません。
水道光熱費
電気、ガス、水道といった費用は、会社を運営するにあたり必要な経費として水道光熱費に計上できます。
支払手数料
支払手数料とは、振込手数料や代引手数料、仲介手数料や販売手数料などで、業種・業態によって内訳はさまざまです。頻度が低い場合は雑費として計上する場合もありますが、毎月の支払額を簡単に把握されたい場合は、支払手数料として計上するとよいでしょう。
外注工賃
外部業者に委託した際にかかる費用は外注工賃として経費計上します。例えば、ホームページの制作やロゴ・名刺・封筒などのデザインなどが該当します。
荷造運賃
荷物の発送費や梱包費は荷造運賃として計上します。また、荷物の梱包に使用するダンボールやガムテープなどの梱包資材も経費として計上できますが、実際に使用した分のみ計上する必要があります。
経費計上できない費用

費用の中には経費として計上できない費用もあります。私的に利用した費用や収益につながらない費用は必要経費として認められません。
ここからは、経費計上できないものの一例を紹介していきます。
私的に利用した費用
家族や友人との食事や旅行費用、私生活に必要な日用品など私的に利用した費用は当然ながら経費として計上できません。あくまで事業の収益を得るために必要な費用しか経費として認められません。
未使用の消耗品
事業で使用する事務用品などの消耗品は経費として認められますが、計上できるのは使用したものだけであり、未使用の消耗品は経費として認められません。
大量に事務用品を購入した場合は、確定申告の際に棚卸をして、未使用分を差し引いて経費計上します。
まだ売れていない余剰在庫
販売前の余剰在庫についても経費として計上できません。商品を仕入れて売り上げる場合に、仕入れにかかった費用は経費として認められますが、あくまで在庫が売れたときに限ります。
法人税・法人住民税
法人税や法人住民税、法人事業税などについても経費計上できません。これらの税金は支出ではなく会社に課せられた納税義務だからです。
経費を不正計上すると重いペナルティを受ける場合も

経費として認められないものまで計上した場合、不適切な申告として税務署の税務調査が入る場合があります。調査によって不正計上が見つかると、脱税として摘発される可能性もあり、内容によって以下のペナルティが課されることもあるのです。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、本来収めるべき税額よりも少ない税額を申告した場合のペナルティです。正しい税額のうち、未納分に10%~15%を加算し追徴課税されます。
無申告加算税
無申告加算税は、納付すべき税額があるにもかかわらず申告期限までに申告していなかった場合に受けるペナルティです。納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%が加算されます。
不納付加算税
不納付加算税とは、源泉徴収等による国税について、納付期限内に支払われなかった場合に課税されるペナルティです。納付すべき税金の10%が課税されますが、税務署から指摘される前に、自主的に納付した場合には5%に軽減されます。また、未納付に対する正当な理由がある場合には免除されます。
重加算税
重加算税とは、「過少申告加算税」「不納付加算税」「無申告加算税」が生じる際に、意図的に事実を隠蔽・偽装するなどの悪質な不正行為を行った際に課されるペナルティです。課税割合は、過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%が追徴課税されます。
参考:加算税の概要
経費精算の流れ
経費について解説をしてきましたが、ここからは、一般的な経費精算の流れを見ていきましょう。なお、出張先へ出向く際の出張費のように、社員が先に支払った経費を後から精算するケースについて説明します。
社員
出張する社員が行う経費精算の作業は以下のとおりです。
- 移動にかかる交通費や宿泊費などの経費を立て替えて支出する
- 領収書・レシートなどを受け取り保管
- 会社が指定する経費申請書や出張報告書などを作成し、領収書やレシートを添付
- 管理者から承認を得て、経理担当者へ申請する
経理担当者
経理担当者の経費精算作業は以下のとおりです。
- 申請書や領収書・レシートなどに不備・漏れがないか確認する
- 申請内容について会計処理をする
- 給与支給日や既定の精算日などに立て替え払いをした社員へ費用を支払う
- 社員へ支払った費用について会計処理をする
※社員からの申請を受けて小口現金で支払う場合や、事前に社員へ仮払金を渡し、差額を後から精算する方法もあります。
多くの手間がかかる経費精算業務その解決策は
上記のとおり経費精算業務には、申請する社員側、経理処理をする経理担当者側双方に手間や負担がかかります。経費を精算する頻度の高い会社では大きな負担となり、ミスやさまざまなトラブルの原因にもなります。ミスやトラブルを引き起こさないためには、経費精算を効率的に進める仕組みが必要です。
ここでは、具体的な方法について解説していきます。
経費精算システムの導入
経費精算は正確さや緻密さが求められる作業ですが、経費精算システムの導入によって経費申請や承認、支払い手続き、会計仕分などの業務を、ミスを減らして手間を大幅にカットできます。
領収書などの読み取りやアップロードにも対応しているものもあり、申請する社員、経理担当者双方に負担を削減できるでしょう。
アウトソーシングを活用する
新たなコストは生じますが、経費精算などの会計業務をアウトソーシングすることも一つの方法です。専門的なスタッフが対応し、システムでは賄えない業務もアウトソーシングできるため、経理担当者の負担を大幅に削減できるでしょう。
出張管理システムの導入
出張の多い企業には、出張管理システムの導入もおすすめです。出張費の精算は、交通機関や宿泊先、レンタカーなど多くの立替精算が発生します。出張管理システムを導入するとそれらを一括で手配し、費用はまとめて会社へ請求されます。個々の社員が経費精算をする必要がなく、精算作業そのものを大幅カットができるのです。また、現金収受の機会を減らすことにより、不正リスクも減らせます。
各種ツール導入で手間を削減し適切な経費計上を心がけよう
経費は、節税につながるなど事業を行う上で欠かせない制度ですが、正しく理解せずに不正な形で計上すると、あとあとペナルティが発生する場合があります。そうならないためにも、正確に経費を管理していく必要があります。
経費精算システムや出張管理システムなど、各種サービスを上手に利用しながら、適切な経費計上を心がけましょう。
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この記事を書いた人

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出張手配専門旅行会社の株式会社エルク(エルクトラベル)のメディア編集部。
これまで2,100社以上の出張関連業務の効率化を支援してきた実績を活かし、出張者はもとより出張に関わる経理や総務などのバックオフィス部門にも役立つビジネス情報を発信しています。