みなし労働時間と出張時の残業について解説

勤怠管理がしやすく、残業代が抑えられると評判のみなし労働時間制ですが、出張時の残業代が気になる人もいるでしょう。そこで、出張時におけるみなし労働時間制の考え方について解説します。
みなし労働時間制とは
労働基準法で定められている労働時間は1日8時間、週40時間です。外回りの営業や在宅勤務などで労働者が会社にいない場合には働いた時間が把握しにくいでしょう。そういった問題を解決するのがみなし労働時間制です。
これは、前もって決められた時間分は仕事をしたとみなすものをいいます。労働時間の計算がシンプルになることから、勤怠管理が複雑な出張の多い会社などで人気です。
みなし労働時間制の種類
みなし労働時間制は裁量労働制と事業場外みなし労働制の2つに分けられます。裁量労働制はさらに2つに分けられ、それぞれに異なった特徴があるのです。ここからは、みなし労働時間制のそれぞれの種類を紹介していきましょう。
裁量労働制
裁量労働制は専門業務型と企画業務型の2つに分類されています。
専門業務型
研究開発など上司から具体的な指示を受けずに行う業務の場合、定められた時間内に業務が終了することはめずらしいでしょう。したがって、あらかじめ定められた時間分を労働時間としてみなすのが専門業務型です。
ただし、どの業務でも専門業務型のみなし労働制が採用できるわけではありません。対象となるのは、厚生労働省令などで定めた19の業務です。
また、専門業務型を採用するにあたり、労使協定を締結して労働したとみなす時間を定めなければなりません。さらに、労働基準監督長への書類の提出も求められます。
企画業務型
労働基準法で定めた企画や立案、調査、分析といった業務に就く労働者に採用されているのが企画業務型のみなし労働時間制です。
実施する場合には労使委員会を作成して企画業務型裁量労働制を実施するための決議を行い、決議後には労働基準監督法に届を提出します。その後、労働者本人からの同意を得る必要があるのです。
事業場外みなし労働時間制
事業所から離れた場所で仕事をする外回りの営業マンなどに採用されるのが事業外みなし労働時間制です。遠方で取引先との商談などを行う出張もこのケースに当てはまるでしょう。
出張時にはタイムカードなどが押せないため、何時から仕事が始まり何時に終わったかを把握しづらく、勤怠管理が難しくなってしまうのが問題です。
そういった理由から、出張時には事業外みなし労働時間制を設け、実際の労働時間にかかわらず前もって決められた時間は仕事をしたとする企業が多くみられます。
出張では移動時間なども多く、労働時間としてみなすかが分かりづらくなるでしょう。そういったときでも事業場外みなし労働時間制が採用されていると、労働管理がしやすくなります。
残業なしが原則
通常の労働時間の考え方であれば、1日8時間の労働時間を超えて働くと残業代が付与されます。しかし、みなし労働時間制の場合には原則として残業が設けられていません。
よって、残業代が大きくカットできるでしょう。一方、8時間労働で6時間しか働かなかった場合でも8時間分の賃金が支給されます。実際の労働時間がみなし労働時間よりも短かったケースも一定の賃金が支払われますので、社員の満足度が高まるでしょう。
出張に多い!残業が適用になるケース
みなし労働時間制が採用されている会社の社員は、あらかじめ定められた労働時間よりも早く仕事が終わった場合に得をすると感じます。
けれど、6時間労働で8時間働いても労働時間は6時間として考えられ、2時間分の残業代が発生しないのがデメリットです。
出張では移動時間が長く雑務も増えますので、決められた労働時間内に仕事が終わらないことがほとんどでしょう。そのため、みなし労働時間制で出張を命じると社員の不満が募りやすいのです。
ただ、出張時の残業も適用になるケースもあります。
法定労働時間を超えた場合
みなし労働時間を法定労働時間と同じ8時間に規定している場合には、8時間を超えると残業として扱われます。8時間のみなし労働時間が規定されている会社で11時間働いた場合には3時間分が残業となり、3時間分の割増賃金が支払われるのです。
深夜や休日に労働をする場合
みなし労働時間を適用している会社で深夜や休日に労働をした場合も、割増賃金は支払われます。深夜労働の割増賃金は通常の125%であり、法定休日に働いた場合の割増賃金は135%以上です。
土日が休みの完全週休2日制の会社では、土曜を所定休日として扱い、日曜を法定休日と就業規則に定めているところが多いでしょう。このケースで土曜日に労働をすると125%以上、日曜の労働では135%以上の割増賃金が支払われます。
移動は労働に含まれる?
出張時には移動時間が長くなることから、出張日の前日に移動をすることもあるでしょう。月曜からの出張の場合には法定休日となる日曜日の出発になりますが、この場合の移動時間は労働時間として処理されません。
移動時間は上司の指揮のもとに働いている時間とは考えにくく、何をしても自由な時間です。そういった理由から、休日に移動をしても労働時間にはなりません。ただし、労働者の出張へのモチベーションを向上させるため、日当(出張手当)を支給する会社もあるのです。
出張時の労働管理は業績にも直結する
出張は上司などの目が行き届かないため、出張者の労働時間の管理が曖昧になってしまいます。事業場外みなし労働制を取り入れると出張中でもみなし労働制が活用できますが、残業が付くかの判断は難しいのが問題です。
そのため、出張手当を支給して社員の満足度を高める会社も多いといえるでしょう。出張中の行動管理を徹底するのであれば、エルクトラベルの出張手配を利用するのもおすすめです。
エルクトラベルであれば社員の出張管理が簡単になることで出張時の不正も防げます。その結果、会社の業績向上にも期待できるでしょう。出張時の労働管理を徹底するためにも、エルクトラベルを利用してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人

エルクトラベル編集部
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出張手配専門旅行会社の株式会社エルク(エルクトラベル)のメディア編集部。
これまで2,300社以上の出張関連業務の効率化を支援してきた実績を活かし、出張者はもとより出張に関わる経理や総務などのバックオフィス部門にも役立つビジネス情報を発信しています。