業務改善とは?すぐに着手したいアイデアと成功に導くポイントを解説

普段の業務を実行するなかで、無駄なフローや配分の偏りなどが発生するのはめずらしくありません。ただそれらを放っておくと、次第に業務全体が滞ったり、商品・サービスの品質が下がったりする可能性があります。
業務にとって非効率な部分を改善していくために行われるのが「業務改善」です。今回は業務改善の基本的な知識から、具体的なアイデアや上手に進めていくためのコツも含めて詳しく解説します。
本記事の内容:業務改善のプロセスと具体的な手法について解説
目次
- 業務改善とは?
- 業務改善で得られる効果(メリット)
- 業務改善の進め方
- 業務改善に効果的なフレームワーク4つ
- 業務改善のアイデア事例15選
- 不要な業務の廃止
- 業務の簡素化
- 業務の集約化
- 属人的な業務の標準化
- 書式の統一
- ペーパーレス化の推進
- アウトソーシングの活用
- 業務改善ツールやシステムの導入
- オンライン会議・面談の導入
- タレントマネジメントの導入
- 目標設定の適切化
- 業務進捗の可視化
- キャリアサポート体制の構築
- コンサルティングサービスの導入
- クラウド上での情報管理・共有
- 業務改善を提案する際にやるべきこと
- 業務改善を成功に導くポイント
- 業務改善アイデアを活用した成功事例
- 無理のない業務改善で効率化を実現しよう!
業務改善とは?
業務改善とは、業務上の課題解決や効率化による生産性向上などにより組織の競争力を高めることを目的として、それぞれの業務の目的やフロー全体を見直し、改善を行うことです。
業務改善の基本は、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を排除し、業務の削減や簡素化、集約化などを行います。その際には「品質の向上」「コストの削減」「時間の効率化」という3つの観点が重要です。
また、業務改善は実施すれば終わりになるというものではなく、「改善が成功したか」を検証することが必要です。その検証には、長い時間がかかることも少なくありません。
「業務改善」と「業務削減」「経費削減」の違いは?
業務改善と似た言葉として、「業務削減」「経費削減」が挙げられます。これらは業務改善の一環であり、業務上で発生する費用やプロセスから無駄を省き、全体として効率化を目指すものです。たとえば、申請処理のフォーマットを簡易化したり、不要なミーティングを削減したりすることが業務削減にあたります。
一方、経費削減はその名の通り、業務上の無駄な経費を削減するものです。備品の管理を徹底することで新規購入費用を抑えたり、照明や冷暖房の使用にルールを設けることで光熱費を削ったりすることを指します。
業務改善で得られる効果(メリット)
業務改善を行うことで具体的に以下の効果が得られるでしょう。それぞれ解説していきます。
■業務改善で得られる効果
- 業務効率化による生産性向上
- コストの削減
- 労働環境の改善
業務効率化による生産性向上
業務改善によって得られる効果のひとつに生産性向上があります。具体的には、業務のシステム化や従来の取り組みを見直してムダな作業の削減や簡略化するなどして業務効率化を図ると、一つの業務にかかる時間を短縮できます。余った時間を別の業務に充てることでより多くの成果が得られ生産性が向上します。
コストの削減
業務改善を行うことで得られる2つ目の効果としてコスト削減があります。例えば、業務改善によって作業にかかる時間が削減されると残業代などの人件費を削減することができます。また、業務マニュアルを整備し業務を標準化することで人材育成にかかるコストの削減が可能です。
労働環境の改善
業務改善を行うことで得られる3つ目の効果は労働環境の改善です。業務改善によってムダな作業の削減や、個々の社員に対してムリな作業量やスケジュールの見直し、社員ごとの業務量のムラを把握し再分配するなど業務内容そのものを見直して改善することで、労働時間の短縮や働きやすい環境の実現につながります。
働き方改革を進めていくうえでは、業務改善が必須の取り組みといえるでしょう。
業務改善の進め方

ここからは、業務改善を行う際の具体的な進め方について、項目ごとに詳しく解説します。
業務を可視化する
業務改善を進めるには、まずは現状の業務を可視化するところから始めます。現状を理解しないままでは、問題点や改善点を見つけることができないからです。
このとき、もっとも重要なのは情報収集です。従業員はそれぞれポジションや立場が異なり、発生する問題も違います。すでに発生している問題だけではなく、今後起こる可能性のある問題に対応するためにも、可能な限り迅速に情報収集をすべきです。
また、併せて業務フローチャートを作成するとよいでしょう。誰が、いつ、どのような業務を行ってどれだけの工数がかかっているかまとめておくと全体像の把握に役立ちます。
課題の洗い出し
業務の可視化ができたら、次は課題の洗い出しを行っていきます。
多くの従業員を雇っている企業の場合、それぞれの従業員が抱える問題にまではなかなか目が届かないことも多いです。業務改善を進める際には、従業員ひとりひとりの仕事量や業務内容も含めて、「ムリ」「ムダ」「ムラ」がないかを徹底的に検証すべきです。
出てきた課題に対して業務を「なくす」のか「減らす」のか、または「変える」ことで改善されるのか、業務改善のアクションごとに分類をします。たとえば、1人では遂行が不可能な量の仕事を抱えている社員がいれば、そこで業務が滞ってしまいます。従業員ごとの業務量の配分・分担を今一度見直してみましょう。
また、逆に、現状のフローのなかに、不必要な業務が含まれていないかも確認すべきです。1人でも十分に遂行できる業務に、複数人が配置されている状況があれば改善しなければなりません。ほかにも、1つの業務を進めるにあたり承認者が多すぎると、それだけ無駄な時間や労力が費やされます。
業務改善にあたり、すべての業務を社内で行う必要があるかどうかも検証すると良いでしょう。外部に発注しても問題のない業務であれば、アウトソーシングを利用する方法もあります。従業員ではなく、RPAなどのITシステムによる自動化が適用できる分野があるなら、システムの導入や開発を進めることも検討してみましょう。
業務改善の目標を決定する
業務改善は、事業活動の効率化に必要なものです。しかし、改善すべき点を挙げ続けていると際限がなくなってしまいます。業務改善を行う前に、「どのような状態にしたいのか」「どういう水準へ持っていくか」といった、業務改善の目標を設定しましょう。
業務改善は、あくまで事業を効率的に推進するための手段であるという点を忘れてはいけません。
改善業務の優先順位をつける
目標を決めたら改善を行う業務に優先順位を付けます。この時に意識したいのは、改善の難易度(かかる時間や手間、費用など)と改善の効果(コスト削減、生産性向上など)です。取り組みやすく改善効果の高いものから始めると良いでしょう。
業務改善のフローを作成する
優先順位を決定したら、今度は「どのように改善していくか」を考える必要があります。その際、業務改善に向けたフローをしっかりと作成しましょう。
業務改善は、従業員も含めて、企業全体で取り組む必要がある場合がほとんどです。従業員たちが「何を実施すべきか」をしっかりと理解できるように、フローを用意することが重要です。
業務改善フローを実行し、PDCAを回す
業務改善に向けたフローが完成したら、実行に移しましょう。PDCAサイクルを用いて、業務改善を繰り返すことが重要です。
そして、実行した業務改善がどの程度の成果につながったのかを検証することも必要でしょう。一度の改善ですべての問題点が解消されることはほとんどありません。継続して問題と向き合う姿勢が大切です。
業務改善に効果的なフレームワーク4つ
業務改善を行う際には、フレームワークをうまく活用することで効率的に業務改善を行えます。ここでは、業務改善に効果的なフレームワーク4つを紹介します。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、あるテーマに対して原因や問題など、そのテーマを構成する要素を枝分かれさせたツリー状に書き出し、分解して論理的に考えることで解決策を導き出すフレームワークです。
業務改善には、以下の3種類のロジックツリーを使います。
- 要素分解ツリー(Whatツリー)
- 原因追及ツリー(Whyツリー)
- 問題解決ツリー(Howツリー)
要素分解ツリー(Whatツリー)
要素分解ツリー(Whatツリー)では、大きなテーマを構成する要素を一つずつ分解していくことで、全体像を把握します。例えば、「残業時間が多い」というテーマに対して、「業務量」や「人員」と要素を分解して網羅的に洗い出すことで、どこに問題が発生しているか課題箇所の特定に役立ちます。
原因追及ツリー(Whyツリー)
原因追及ツリー(Whyツリー)は、課題の原因を追究するために用いるロジックツリーです。一つの課題に対し「なぜ起きたのか?」原因を挙げていき、出てきた原因に対してさらに「なぜ起きたのか?」を繰り返し分析をしていきます。そうすることで根本原因を把握し、正しいアクションを導き出すのに役立ちます。
問題解決ツリー(Howツリー)
問題解決ツリー(Howツリー)は、課題に対しての解決策の洗い出しと優先順位をつけるために用いるロジックツリーです。原因追究ツリーで課題の原因を突き止めたあとに、その解決策を列挙していきます。さらにその解決策も深堀していき、具体的なアクションにまで落とし込みます。その結果、具体的な改善策と優先順位の決定に役立ちます。
ロジックツリーを作る際は、What→Why→Howの順番に行い、MECE(ダブりがなく、漏れもない状態)を意識して取り組むとうまくいくでしょう。
ECRS(イクルス)
ECRS(イクルス)とは、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(交換)、Simplify(簡素化)の頭文字を並べたもので、4つの視点から効果的な改善手法とその順序を示す行うフレームワークです。
①Eliminate(排除) | 不要な業務やなくてもよい工程をやめる(排除) |
---|---|
②Combine(結合) | 複数の部署で行われる類似業務を一か所にまとめる(結合) |
③Rearrange(交換) | 業務の順序や人材を入れ替えることで効率化を図る |
④Simplify(簡素化) | 業務の一部を自動化したり、パターン化や回数を減らすなどして業務を簡素化する |
E→C→R→Sの順番で改善効果が高いとされており、順番に沿って改善策の検討・実施を進めることで、適切な優先順位で業務改善が行えます。
KPT
KPTとは、「Keep」「Problem」「Try」の頭文字を取ったもので、業務改善を行った後の施策の評価に用いられるフレームワークです。
Keep(良かったこと/継続すること) | 成果が出ていて継続すべきことを抽出 |
---|---|
Probrem(悪かったこと/改善すべき課題) | 上手くいかなかった施策や問題点、原因を<抽出/td> |
Try(次に取り組むこと) | 「Probrem」の具体的な解決策や「Keep」の更なる改善案を抽出 |
業務改善を行った後に現状をKeepとProbremに分類します。細かなことでも気にせずに、思いついたものをどんどん洗い出していきます。抽出されたKeepやProbremに対して、選んだ要因やそれぞれの原因を掘り下げて考えていき、その上でTryを決めます。Tryを決める際は「心がける」や「頑張る」など抽象的なものではなく、具体的なアクションに落とし込みます。
KPTは個人でも複数人でも進められますが、複数人で行う方が新たな発見や気付きにつながりやすいため、5~6人前後を目安にメンバー構成すると良いでしょう。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、マーケティング手法の1つで、商品の製造から流通・販売・サービスといった流れを企業が提供する「価値の連鎖」として考え、それぞれの工程ごとに分析する手法です。
事業活動を商品の製造・開発やサービス提供などの「主活動」と、人事・労務管理や技術開発、企業インフラ、調達などの主活動を支える「支援活動」に分類し分析を行います。
カテゴリーを分けて分析を行うことで、どの工程にどのような価値があるかや、どの業務にコストがかかっているか、競合他社と比べて自社の強みや課題を可視化することができるフレームワークです。無駄なコストの削減に役立てたり、他社との差別化を図ったり、特定の顧客層・商品にリソースを集中して投資するなどの改善案を導き出します。
業務改善のアイデア事例15選
業務改善を行おうとしても、「どこから始めるべきか」を見極めるのは簡単ではありません。まずは具体的な改善策を見ていき、実施できる改善方法を検討してみると良いでしょう。
不要な業務の廃止
まずは業務を廃止してしまうことから考えます。
日常業務の中にも意外と不要な業務が含まれている場合もあります。例えば目的が不明確な会議を繰り返したり、何となくメールのccに関係者をたくさん入れてみたりなどです。業務改善を考える上で真っ先に検討するポイントです。
「なぜこの業務を行っているか」「この業務が何につながっているか」を考えながら検討を進めます。
業務の簡素化
業務を廃止することまではできないけれど簡素化することは可能といったケースがあります。簡素化とは、業務の回数や頻度を減らしたり作業が簡単に行えるように変更したりすることです。
業務フローの中でムダやムリな業務がないか洗い出してみましょう。
業務の集約化
次に検討する手法は業務の集約化です。
同じような作業を各部署でそれぞれ行っている場合、1カ所にまとめることで業務の効率化や品質向上につながります。
属人的な業務の標準化
各社員ごとにやり方が異なる作業や、担当者以外にできない業務など属人的な業務についてはマニュアルを作成して標準化することで改善が図れます。
担当者ごとのムラを少なくして、業務時間の削減や品質の均一化などその効果を広範囲に及ぼすことが可能です。
書式の統一
書類の書式を統一することで、書類作成の手間や労力を省くことができます。
あらかじめテンプレートを用意し、従業員に共有しておけば、ゼロから書類作成をせずに済むからです。これは紙の書類だけに限らず、メール文やWordの文字変換の統一を行うなどで、業務の効率が改善される可能性があります。
ペーパーレス化の推進
従来のスタイルで業務を進めていると、紙の消費量が増大してしまいがちです。
たとえば、「ミーティングの共有資料」「シフト表」「見積書」「請求書」「決算資料」など、紙で用意する書類が多いと、それだけコストがかかってしまいます。重要書類はデータ保存するといった対策を行うことで、コストを抑えられるでしょう。
また、これまで紙で管理していた書類をデータベース化することで、検索しやすくなるというメリットもあります。書類やデータを探す手間を省くことができれば、業務改善になるでしょう。
アウトソーシングの活用
外部の専門業者にアウトソーシング(業務委託)することも有効な手段です。
時間のかかるデータ入力など業績につながりにくい業務をアウトソーシングして、より付加価値の高いコアな業務に集中することができるので、生産性が向上します。
また、必要になったときに必要な分だけ依頼することで、人件費を変更費化することもできるので、過剰な人材確保や設備投資などのコストを削減できます。場合によっては、自社で行うよりも高いクオリティの成果がでることもあり得るでしょう。
業務改善ツールやシステムの導入
現在は、業務改善に役立つさまざまなシステムやツールが販売されているので、それらを導入することで業務改善に役立てるという方法もあります。
具体的には、「タスク管理システム」でタスク一覧が検索できるようになり、そこでタスクの管理・共有を行えたり、「経費精算システム」で各月の経理を簡単に参照・把握できるようになったりします。
また「出張管理システム(BTM)」を導入すれば、出張手配から申請・精算まで一括管理し出張手配の手間や経費精算業務の削減が可能です。
このようなシステムを導入することで、これまで煩雑になっていた業務が効率化できるだけではなく、利用状況などを分析してさらに業務改善を行いやすい環境を整えられるというメリットもあります。事務負担の軽減やコスト削減に役立つツールを活用してみましょう。
オンライン会議・面談の導入
オンライン会議や面談は場所問わずに開始できるため、移動費や移動時間がかからず素早く意思決定できるメリットがあります。
通常の会議であれば会議室に集まることや紙資料の使用など、無駄を省ける点がいくつかあるところですが、オンライン会議を取り入れることでリモートワークの方でも気軽に参加できるようになり、ペーパーコストもかかりません。
またオンライン会議でも対面する会議でも、「その会議を本当に開催する必要があるのか」という点は重要なポイントです。情報共有や報告のみの要件であればメールや電話などで問題ありません。そして従業員に「自分が何でこの会議に参加しているか何のために出席しているのかわからない」と思われないように、題材を決めたら参加者も選定しましょう。
タレントマネジメントの導入
タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりのスキルや経験を把握して管理することで、適正な人員配置や育成を目指すことを指します。タレントマネジメントを導入すると、従業員が能力を発揮できる場所に配置されてさらに能力を伸ばすための育成も可能です。
タレントマネジメントは、システムにより従業員の特性を可視化することでおこなえるため、従業員の情報を管理するシステムが必要になります。従業員のデータベースにはキャリアや実績、行動特性や人事評価などを登録して管理します。データが多くなれば現在の組織に足りていないスキルも判明し、これからの社員育成や成績目標なども立てやすくなるでしょう。
このように人材を適切にマネジメントできれば業務の効率化のみでなく、さらなる組織力の高まりによる売上増加が期待できます。
目標設定の適切化
業務や売上に目標を立てている企業は多いですが、とりあえず高い目標を掲げておくというやり方は推奨できません。業務の進捗に合わせた適切な目標を設定することで従業員のモチベーションアップにもつながり、業務の効率化や今後の社員育成にも役立ちます。
業務全体の目標も重要ですが、たとえばフォーマットが定まっていない書類が複数ある場合は共通のフォーマットを作成し共有するといった、身近な目標から解決することも優先したいポイントです。本記事の業務改善アイデア15選の中で実施できていないことをピックアップして目標にすることも良い方法です。
適切な目標は業務の進捗のみでなく、これからの課題や現在の成果を考慮して設定する必要があります。高い目標を掲げて達成する従業員には重要度の高い業務を与えて、その分待遇に関しても適切に評価しましょう。目標のみ高くして業務量を増やしても待遇が変わらない場合は、従業員が定着しにくいといえます。
業務進捗の可視化
各従業員がどの業務をどの程度進めているか、業務の進捗を一目で確認できるようになると、経営者も誰に何を任せようか把握しやすくなります。タスク管理で社内で情報共有することが効果的な業務改善につながり、生産性の向上も期待できます。
また日ごろから業務進捗を報告しやすい環境づくりも大切です。タスク管理のみでは報告できないことも迅速に報告しやすいように、定期的に情報交換の場を設けてもよいでしょう。
キャリアサポート体制の構築
社内のキャリアサポート体制は、業務の効率化や売上アップに直接つながる改善アイデアの一つです。従業員はそれぞれのキャリアプランを考えて、それを実現しようとしています。全員に沿うことは難しいですが、従業員が自主的に適切なキャリアアップできる環境づくりは大切です。
人材育成の面で例を例を挙げると、上司ではなく年齢の近い社員が新入社員をサポートするメンター制度が導入しやすいスキルアップ制度の一つです。上司よりも気軽に相談しやすい先輩からスキルや知識を継承しやすく、社内のコミュニケーションも深くなるでしょう。
適切に職務経験が積めたり資格取得・能力開発支援などのキャリアサポートがあれば従業員のモチベーションも上がりやすく、離職率の低下が期待できます。
コンサルティングサービスの導入
業務内容や従業員のマネジメントについては社内でも改善できるポイントですが、企業全体の改善を検討している場合は、有料でコンサルティングサービスを導入することをおすすめします。プロの視点からコンサルティングを受けられるため、社内から見ても気づかないような改善点や問題点が判明し、業務改善のために何をすればよいのか課題もアドバイスしてくれます。
コンサルティングサービスを導入する際は、まず自社の現状や問題点をまとめて項目化してみてください。その後受けた結果を社内で共有し、各従業員が確認できる状況にしましょう。
クラウド上での情報管理・共有
クラウド上による情報管理と共有とは、業務で使用するデータをクラウドサービス上に保存して共有することを指します。
クラウド上に業務データを保存すると、時間や場所問わずにデータにアクセスできることからリモートワークや営業にも対応しやすいことがメリットです。特に取引先でデータや資料をスムーズに出せないことは痛手なので、外回りがある企業であればクラウドによる情報管理は重要な業務改善ポイントになるでしょう。
今まで担当したことのない業務に割り当てられた際に、マニュアルをクラウド上に保管していれば、前任者に詳細の確認やデータの共有をしなくてもすぐに参照して取り組めます。クラウドは情報を管理するのみでなく一つのデータに対して共同で作業できるものもあり、業務効率にも大きく影響するでしょう。
またクラウドを導入する際は、セキュリティ対策についても気にするべきポイントです。情報漏洩や不正アクセスに対応したセキュリティ対策を徹底しているクラウドを比較・検討しましょう。
業務改善を提案する際にやるべきこと
業務改善を提案する前には、いくつかやるべきことがあります。最初から急に業務改善に取り組んでも思ったような成果が得られなかったり従業員の負担が増えるのみだったりなどで、失敗に終わる可能性があります。まずは業務改善の前に以下の点について一度考えてみてください。
業務改善の前にすべきこと6選
- 提案する目的と目標を設定する
- 現状の課題を特定して改善策を整理する
- プレゼンテーションのスキルを上げる
- 具体的なデータや事例を追加する
- プロジェクト計画を策定する
- 関係者に協力を仰ぐ
提案目的と目標の設定
業務改善を提案する際は、まず提案する目的と改善の目標を設定しましょう。なんとなく「業績を上げたい」や「離職率を下げたい」のような大まかなものは最終目標であるため、まずは具体的な目標を決めましょう。
具体的な目標の作り方は「SMARTの法則」による方法が利用しやすくおすすめです。SMARTの法則とは「Specific(明確)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限設定)」の頭文字を取った言葉です。
Specific(明確・具体的) |
漠然とではなく、限定的でも目標を明確に決める。 |
---|---|
Measurable(計量性) |
数字で達成しているかわかるような目標を考える。 |
Achievable(達成可能性) | 実現可能な目標であるか考える。 |
Relevant(関連性) | なぜ目標を達成するのか。目的を達成すればどうなるのか提示する。 |
Time-bound(期限設定) | 目標に期限を設けることで計量化となり、モチベーションを高めながら取り組める。 |
SMARTの法則を利用することで、より精度の高い目的と目標が作れます。
現状課題の特定と改善策の整理
目的や目標を定めるためには、現状抱えている課題の特定と改善策の整理が求められます。
まず経営者が現状の業務を把握することが重要です。システムやタスク管理で可視化されていない場合は従業員へのヒアリングやアンケート実施などの方法で、現場の声を聞き多くの課題を集めましょう。
たとえば現場の作業量や残業について、納期などを聞くと「ムリ・ムダ・ムラ」が多く発生していることが多々あるため、特定後はどのようにして改善していくか整理してまとめます。いくつかの課題が特定できたら優先順位をつけて、重要度・緊急度の高いものから改善の策定に取り掛かります。社内でどうしても改善策が浮かばない場合は、外部のコンサルタントに依頼してもよいでしょう。
プレゼンテーションスキルのアップ
目標を作ったあとは、従業員全員に伝わるようにプレゼンして周知します。構成を明確にして従業員全員がわかりやすいように視覚的な資料を用いて、聞き手が理解しやすいようなプレゼンを心がけましょう。
具体的なデータや事例の追加
プレゼンの際は、具体的なデータや事例があることでより従業員からの理解が深まります。特に他社の成功事例はこの提案が現実にできるという信憑性を高めるもので、従業員のモチベーションアップにもつながります。
プロジェクト計画の策定
従業員からの理解が得られたあとは、プロジェクト計画の策定に進みます。スケジュールやプロジェクトの管理方法、予算など具体的な計画を策定して、実施後も逐一改善策の効果を検証することでより高い成果を目指せるでしょう。
関係者の協力を得る
関係者の協力とは、業務改善の目標に深く関わっていない社員や取引先に関しても提案を理解してもらうことを指します。社内では定期的に情報共有の場を設けて進捗を確認して、現在どの程度進んでいるか周知することも計画の継続には重要なポイントです。
業務改善を成功に導くポイント

企業における業務改善を成功させるためには、意識すべきポイントがあります。要点を抑えることで、現場レベルで効果的に業務改善を進めていけるようになるでしょう。
QCDを意識する
QCDとは、「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の略称です。一般的には製造業などで使われるフレームワークですが、業務改善を進める際にも当てはまる考え方です。より良い商品・サービスを、低いコストで、求められた量と納期で届けることを目指して改善を進めます。
しかし、CQDの各要素は相互に関係しているため、一つの要素に偏って改善を進めるとその他の要素に悪影響を及ぼします。例えば、品質を追求しすぎるとコスト増や納期に時間がかかりすぎてしまいます。したがって、QCDの各要素をバランス良く取り組むことが重要です。
業務改善で何を目標とすべきかがわからない場合には、まずQCDの向上を目指して生産性を高めてみると良いでしょう。
業務改善を重視する風土を醸成する
業務改善は、経営陣や管理職だけが努力すれば良いというものではありません。従業員自身が自発的に取り組んでこそ、本当の意味で業務の効率化を図ることができます。そのため、従業員が自ら進んで改善案を提案してくるような社風を作ると、望ましい結果を得やすくなるでしょう。
たとえば、社員同士が積極的に成功事例や失敗事例を共有し合う習慣が生まれると、企業全体の業務改善に貢献します。良い社風を根づかせるためには、業務完了後の振り返りを実施し、改善点を提示する時間を設けるようにするといった手法があります。また、積極的に改善に取り組む従業員や部署を、組織としてきちんと評価してあげる仕組みを整えることも大切です。
そして、社内だけでなく取引先などの顧客からの意見も参考にしていく必要があります。顧客に対する営業やサービスなど、ビジネスの基本的な面でも問題が起こっていないかを確認することも、業務改善に役立ちます。
定期的に効果測定をする
業務改善の効果は、すぐに表れるとは限りません。長期間にわたって改善を続ける必要がある場合、定期的に効果を測定することが重要です。また、定期的に効果測定を行うことで、従業員にも業務改善の成功を実感してもらえるようになり、さらなる改善や問題点の解決を促します。
全社的な取り組みを促すためにも、情報共有を行って「見える化」していくことも大切です。
ボトルネックを把握し、解消に努める
業務改善を続けることは、自社の課題を発見するきっかけにもなります。現状を把握したうえで分析し、ボトルネックを改善することができれば、さらに業務や作業を効率化できるでしょう。そのためにも、社内における情報収集を意識的に行い、従業員からも情報提供を募るなどの工夫を重ねることが重要です。
ボトルネックを把握するためには、業務全体の流れを示すフローチャートから導き出すことが有効だといえます。1つずつ手順を確認することで、作業ごとの優先順位が分かり、どこで業務が滞っているのかを理解できるのです。
普段の作業手順を点検することによって、業務改善のフレームワークを構築してみましょう。
業務改善アイデアを活用した成功事例
業務改善の目標や改善するポイントについては紹介しましたが、いざ目標を立てることを考えると何から始めてよいかわからないこともあるでしょう。ここからは実際に業務改善で成功した企業のアイデアを紹介いたします。
銀座コージーコーナー『業務デジタル化クラウド導入』
「株式会社銀座コージーコーナー」では、従来まで紙やハンコによる承認作業がおこなわれており、業務進行が社内に限られることや書類紛失のリスクなどの課題が挙げられていました。
そこでワークスタイル変革の一手として、業務のデジタル化が進められる「SmartDB(スマートデービー)」を利用しました。「SmartDB」は基本的な申請業務や契約書管理に対応しているほか、今後のデジタル化に備えて非IT部門の従業員でも自らシステムを開発できるような基盤があり、まさに「ムリ・ムダ・ムラ」を無くすための変革ともいえるでしょう。
出典:銀座コージーコーナー、「SmartDB」導入で稟議業務をデジタル化 ワークスタイル変革で、働きやすい環境づくりを推進 | SmartDB®【大企業の業務デジタル化クラウド】
株式会社三井住友銀行(SMBC)『RPAの導入』
三井住友銀行は、「資本」「資産」「経費」の効率にこだわった運営を目指して、定型化されている業務をRPAに任せたりグループ一体運営のためにオフィスを一つのビルにまとめたりなどの業務改革をおこないました。
RPAを利用した結果、これまで手作業でおこなっていた顧客往訪前情報収集は80%効率化し、金融商品モニタリングに関する集計業務も35%効率化しました。RPAを使用する準備として従業員に研修を受けさせ、自らRPAでソフトロボを開発できるような環境を作ったため、結果2017年から2019年の間で350万時間、1750人相当分の業務量を削減できたため、業務改善の成功といえるでしょう。
出典:第2編 第2章 3. (コラム) 業務改革を通じたコストコントロールと生産性向上 : SMBCグループ二十年史
株式会社五味八珍『調理技術の形式知化』
五味八珍は静岡県を中心に展開する中華ファミリーレストランで、2023年時点では1405名の従業員が在籍しています。五味八珍では調理の質が店舗ごとに差があり、均一化されたサービスと従業員の育成を目標としていました。
そこで五味八珍ではメニュー全品のマニュアルを作成するのみでなく、調理担当の暗黙知をオープン化して調理スキルやポイントを文章化し、全店舗の品質均一化を図りました。属人的な業務を標準化したことで業務改善に成功した例の一つです。
出典:株式会社五味八珍|サービス産業生産性協議会 - SPRING
無理のない業務改善で効率化を実現しよう!
業務改善を進めることで、コストの削減はもちろんのこと、自社が提供する商品・サービスの品質向上につなげることもできます。単に業務が効率的になるという効果だけではなく、顧客満足度の向上にもつながるのです。
専用ツールの導入やシステムを活用するなどの方法も検討してみましょう。出張の多い会社では出張管理システムの導入で、出張申請・手配・管理・精算まで一元管理で効率化され、立替精算業務も削減できるのでおすすめです。
効率よく持続的に取り組むには、複数のメンバーが同じ方向を見て共通認識を持って取り組むことも重要です。業務効率化研修も実施することで組織として体制を強化することもおすすめです。
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この記事を書いた人

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